20211209
夜明け前の東の空にレナード彗星(C/2021 A1)を撮る
- 金生山 -







夜明け前の東の空に彗星を探す。

レナード彗星は増光を続け、この時の光度はおよそ5等級の見込み。
肉眼でも見られる明るさだが、彗星の高度は日に日に下がっている。
昨日の方が高度が高くてよかったけれど、押し寄せる雲の隙間からかろうじて数カット撮影しただけだった。
今日は快晴だが、1日違うと高度もずいぶん低くて、それだけ大気のよどみと市街地の光害が邪魔をする。

周りの恒星から判断して、たぶんこのあたりか?と、少しずつレンズの向きを変えて追い込んでいくと、、、、、あっ、いた!
エメラルドグリーンに美しく輝いている。

レナード彗星は日に日に速度を増し、最近は1日に約10度と非常に高速で天空を移動していく。
撮影する間にも、見る見る恒星を引き離してまるで宇宙を駆け抜けていくようだ。
赤道儀で恒星追尾しても1分間も露光するうちに、彗星核がどんどん動いていく。
メトカーフコンポジットがベストだろうか、今日は手作業で彗星核を基準に画像を重ねる。

レナード彗星は4万年の彼方からやってきた。
姶良Tn火山灰が姶良カルデラの大噴火によって降りそいだのが約2万8000年前。旧石器時代の人々の環境に大きな影響を与えたAT降灰よりもさらに古い約3万5000年前に後期旧石器時代は始まった。以前、試行錯誤しながら調査に格闘したのがこの時代だった。
レナード彗星はもっと古く、はるか4万年という昔に太陽への旅に出た彗星である。
軌道は双曲線を描き、1月3日に近日点を通過したあとはそのまま遠くへと飛び立ち、二度と帰ってくることはない一期一会の彗星。

ふたご群が終わる頃には、彗星は夕方の西の空へと移動する。
アイソン彗星の彗星核崩壊が頭をよぎるが、はたして今度はどうか。




2021年4月9日04時41分撮影
α7RM3 + E 70-350mm F4.5-5.6 G OSS
180秒間の露光(15秒×12枚を彗星核基準にコンポジット)、赤道儀で恒星追尾撮影